精神疾患の障害年金、どこに相談すればいい?──専門職の経験から

■はじめに

「障害年金って、どこに相談したらいいんでしょう?」

制度の説明はネットにあふれていますが、実際の申請はケースごとに事情が異なり、迷う人は少なくありません。

私は精神保健福祉士として病院や福祉の現場で働き、その後、社労士資格を取得。社労士法人で障害年金の業務も経験してきました。

この記事では、その経験から「相談先選び」で押さえておきたいポイントをまとめます。


■相談先とその特徴

🔸年金事務所
制度説明の窓口。予約制で混みやすく、体調不良などでキャンセルすると、次が1か月以上先になることもあります。
相談内容は記録に残るため、初診日が曖昧・戦略が必要なケースでは慎重に。
全国どこの年金事務所にも、一定日には社労士の当番相談日があります(要予約)。

🔸年金ダイヤル・街角年金相談センター
年金ダイヤルは基本的な案内のみ。
「街角年金相談センター」は、日本年金機構が全国社会保険労務士会連合会に委託して運営している窓口で、相談対応には必ず社労士がいます
年金事務所と同様の相談が可能で、予約制。
場所によっては年金事務所より混雑が少なく、落ち着いた環境で話ができることもあります。

🔸病院のワーカーや福祉職
精神保健福祉士や相談支援専門員が、無料で相談にのってくれる場合もあります。
書類作成を手伝ってくれることもありますが、本業ではないため、制度理解や対応は個人によって異なります。

🔸社会保険労務士(社労士)
障害年金申請代行ができる唯一の資格。
年金専門でも精神障害案件の経験は事務所により差があります。
費用は成功報酬型(2〜3か月分+税)、着手金(事務手数料)+成功報酬型、定額型などさまざま。最低報酬額を定めている所もあります。
福祉職(精神保健福祉士や社会福祉士)を雇っている事務所や社労士自身が福祉系有資格者の場合も。

🔸ココナラなどのオンライン相談サービス
社労士や福祉職が自己申請のサポート、書類作成、申請代行(社労士のみ)を有料で行うサービスが多数出品されています。
全国対応・匿名相談も可能で、近くに相談先がない人にも便利。


■委任してから気づく落とし穴

  • 契約後に追加費用(診断書取得代行料・訪問費・郵送費など)が判明
  • 「障害年金対応」とHPにあっても、精神障害案件の経験がほぼない
  • 大手事務所で担当者が途中で変わり、引き継ぎに時間がかかる
  • 通院同行や医師面談は有料、または対応なし

■社労士事務所のタイプと対応スタイル

🔸大手社労士法人
体制や実績は豊富で、HPの情報も充実。
ただし分業制のため、対応が社労士以外のスタッフである場合もあり、必ずしも社労士が直接対応するとは限らない。
複数人で進める分、案件のスピードは安定しやすいが、じっくり話を聞いてほしい人には向かない場合も。

🔸個人事務所
基本的に一人の社労士が一貫対応。得意分野と苦手分野がはっきりしている場合がある。
依頼状況によってはスピード感に差が出やすいが、同じ担当者と継続的にやり取りできるのが強み。
しっかり話を聞いてほしい人にはこちらのほうが向くことも。

🔸福祉職在籍型事務所
生活面も含めて相談しやすく、制度連携がスムーズ。
精神保健福祉士や社会福祉士など福祉系有資格者が初回面談を担当し、依頼者が話しやすいよう細かな配慮をしていることが多い。

面談方法もさまざまです。

🔸自宅や施設に訪問
🔸事務所で面談
🔸完全オンライン(Zoomや郵送)
🔸シェアオフィスや喫茶店での面談


■複雑なケースは順番が大事

🔸病院を転々として初診日が曖昧
🔸カルテが廃棄されている
🔸一度不支給になった
🔸傷病名が複数、精神障害の他に身体疾患もある

こうした場合、最初に年金事務所へ行くと相談記録が残り、後から修正が難しくなることがあります。
経験豊富で、状況に応じた戦略を立てられる社労士や支援者に、先に相談する方が安全です。

過去に申請がうまくいかなかった方は特に、以前の相談内容や手続きが次の申請にも影響することがあります。
相談先の選び方は、初めての方だけでなく、申請経験のある方にとっても重要です。


■社労士の探し方(行動しやすく)

🔸都道府県の社労士会HP
対応可能分野が書かれている場合もあり、障害年金に対応できる社労士と対応できない社労士がいるため要確認。
実際、自分の事務所に依頼が来ても年金専門の社労士事務所に委託するケースも。

🔸ネット検索
「地域名+障害年金+社労士」で検索し、HPの受給事例をチェック。

🔸病院や支援者からの紹介
過去に依頼経験がある社労士を知っていることがあります。

🔸職場からの紹介
企業や法人には顧問社労士がいることもあり、そこから紹介してもらえる場合も。(得意分野は要確認)

🔸電話やお問い合わせフォームで聞く
例:「精神障害案件の経験は?」 
  「通院同行は可能?」
  「費用はどこまで含まれる?」
対応の早さや説明の丁寧さもチェック。

🔸HPのプロフィールや挨拶文を読む
経歴や社労士以外の資格の有無、支援に対する考え方がわかります。  
まずは無料相談を利用し、説明の分かりやすさや相性も確認すると安心です。    

✅ 年金事務所勤務出身の社労士は、制度理解や審査の流れに強いです。
✅ 福祉職や特別支援学校教諭出身の社労士は、相談者に寄り添う支援や生活全体のサポートに長けています。
✅ 医療機関や製薬会社出身の社労士は、医師とのやりとりや診断書依頼の進め方に長けています。
✅ 福祉事業所を経営している社労士は、就労支援や生活支援まで視野に入れた提案ができます。


■依頼前のチェックリスト(経験から)

□ 費用説明が明確か(追加費用も含め事前説明あり)
□ 申請までのタイムラインを提示してくれるか
□ 依頼者がやるべきことを明確にしてくれるか
□ 精神障害案件の経験が豊富か
□ 自分のケースに近い受給事例があるか
□ 話を丁寧に聞き、否定せず受け止めてくれるか
□ やり取りの方法(LINE・訪問・オンラインなど)が自分に合っているか
□ スピード感があるか(遅れると将来の受給額に影響する場合あり)
□ 社労士のプロフィールや経歴から信頼性を感じられる

価格や近さだけで選ぶより、長く安心して任せられるかどうかを大事にしてください。


■まとめ

精神障害の障害年金は、医師への説明の仕方、診断書の内容、病歴就労状況等申立書の書き方で受給結果が変わる場合があります。
特に精神障害のように目に見えにくい障害では、準備段階の方向性が重要です。

今日ご紹介した相談先の特徴や選び方を参考に、まずは無料相談や問い合わせで、自分に合った相手を見つけてください。
デリケートな個人情報を話す場だからこそ、納得できる相手を選びましょう。

※本記事は、筆者が運営するNOTE記事をもとに再構成し、当事務所HPコラムへ転載したものです。
当事務所(結糸社会保険労務士事務所)は、静岡県三島市・静岡県東部・神奈川県西部を中心に、精神障害を含む障害年金の相談・申請サポートを行っています。

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