精神障害があっても働ける──でも障害年金はどうなる?

「働いているから、もう障害年金はもらえないですよね?」

そんな不安の声を、日々多く聞きます。特に精神障害をお持ちの方にとって、“就労”と“年金”の関係はとても誤解されやすい部分です。


⁉️就労=元気 本当にそうでしょうか

一言で「働いている」といっても、その実情はさまざまです。

  • フルタイムで安定して働いている人
  • 支援機関や上司からフォローを受けながら、週2〜3日だけ働くのがやっとな人

どちらも「就労中」ではありますが、体調や日常生活への影響、支援の有無、疲労感の度合いは大きく異なります。その違いを無視して「働けている=年金不要」と判断されてしまうと、本来必要な支援が断たれてしまう可能性もあります。

🔍 事例紹介:年金記録では見えない“しんどさ”
私が過去に担当した方で、うつ病で通院中でしたが、何年も切れ目なく就労していて、厚生年金に加入していた方がいました。
両親や周囲からの目が気になり「働かなければならない」という強迫観念のもと、採用面接を受け、就労を始めては体調を崩し、数か月で休職・離職・転職を繰り返していたのです。
年金記録だけを見ると“安定就労”に見えてしまうケースでしたが、実態は重度のうつ病。状況を正しく伝える補足書類を添えたことで、障害年金の受給が決まりました。


💡精神障害の審査では、「どのように働けているか」が重要

「働けているかどうか」は、精神障害の場合の審査で重要な評価ポイントのひとつです。ただし、フルタイムで元気に働けている人と、配慮や支援があってなんとか働けている人とでは、日常生活能力に大きな差があります。審査ではその違いを細かく確認していきます。そのため、診断書や申立書には、「支援があるからこそ働けている」ことを具体的に伝えることがとても大切です。


📄障害年金申請に必要な書類

障害年金の請求に必要な基本書類は以下の4点です。

  1. 診断書
  2. 病歴・就労状況等申立書
  3. 受診状況等証明書
  4. 障害年金裁定請求書

📜診断書に基づく審査:日常生活能力の判定とは?

厚労省が定める「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、診断書に基づく審査で、7つの日常生活能力項目について4段階で評価し、その総合的な日常生活能力を5段階で評価する形式が用いられています。

この評価は、単なる病名や症状だけでなく、日常生活や社会生活への影響の程度を審査するための基準です。医師が記載する4段階評価(各項目)と5段階の総合評価の両面から、生活状況が判断されます。

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 精神障害の障害年金請求における診断書の審査項目
(日常生活能力の判定項目)

🧩 以下は、診断書に記載される評価項目の中でも特に誤解されやすい「就労」や「社会性」に関する観点について、どのように見られるかの例示です。あくまで一例であり、申立書を作成するうえでの理解や記載の参考にしていただければと思います(※診断書は医師が作成するものですが、その評価観点を理解する一助としてご紹介しています)。
※詳細は厚労省のガイドライン参照:https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/00001300

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補足的な5項目の例
(診断書の評価観点の理解を深めるための参考)

つまり、「働いている」ことだけではなく、どのような支援・配慮を受けて働けているのかが重要なのです。

✅ 診断書や申立書には「支援があるからこそ就労が成り立っている」ことを丁寧に記載する必要があります。

ただし、これらの書類だけでは「実際のしんどさ」や「支援の存在」が正確に伝わらず、不支給や等級非該当となるケースもあります。


📄より正確に伝えるための補足書類

精神障害をお持ちの方が、支援付きで働いている場合などには、以下の資料を添えることで審査の理解が深まります。※提出は任意

  • 医師の意見書(診断書を補足する形式で)
  • 職場での支援状況等申立書(人事・上司などから)
  • 支援者(就労移行支援、B型事業所など)からの意見書
  • 本人や家族による症状の変化・困りごとの記録
  • 過去の診断書や精神科デイケア記録など

✅ 「どのように支えられて、どこまでならできるのか」という視点が大切です。


💻AIツールで日々の体調や疲労感を“見える化”する

前回の投稿でも紹介しましたが、近年は、AIを活用して自身の感情や疲労、生活リズムを記録・可視化できるツールも登場しています。

日々の体調や変化を記録しておくことで、診断書作成や審査の根拠資料として役立つことがあります。

「働いているように見える」その裏にある疲労や不安を、数字やグラフで示すことも支援の一環です


⚠️不支給が増えているという現実

近年、障害年金の審査は年々厳格化しています。
特に精神障害に関する申請では「不支給」「等級非該当」となるケースが目立っており、制度上の支援を必要とする方が制度の網からこぼれ落ちてしまう事態も起きています。

厚生労働省のデータによれば、
📉 令和4年度の障害年金新規裁定における不支給率は約35%(すべての傷病を含む全体)と報告されています。
📉 さらに、令和5年度の日本年金機構の集計では、精神・知的障害による新規請求のうち、約8〜9%が不支給とされています(※特定調査対象における割合)。

このように、年金が「もらえるかどうか」ではなく、「伝え方によって結果が変わる」状況が強まっているのです。

制度の枠組みや審査基準が変わらなくても、「書類での伝え方」や「補足資料の工夫」の有無によって、支給・不支給の分かれ目になることが多くなっています。


✍️あなたの「しんどさ」は、書類でしか伝えられない

障害年金の審査には、面接はありません。 企業の採用ではもちろんのこと、学校の入試でも、面接があることも多いですよね。
でも、障害年金は書類だけで審査される制度です。 つまり、書いていないことは“存在していないもの”とされてしまう可能性があるのです。

だからこそ――
✔️ 日々の疲れや不安、支援が必要な状態を、
✔️ 誰が見てもわかるように、
✔️ 書類で丁寧に伝えることがとても重要なのです。

発病から請求までの経過をストーリーが見えるように整備し医師の診断書の記載内容と整合性がとれるようにすることが大切です。


📄書類は自分でも作れるけど…

もちろん、障害年金の申請書類は自分で作ることも可能です。しかし、制度の複雑さや審査の特徴を踏まえて、正しく・速やかに伝えるには、経験とノウハウが必要です。

社労士に依頼する場合がかかりますが、
✔️年金受給が決まるまでの期間が短縮される可能性がある
✔️経験豊富な専門職が作成することにより、書類の質が上がる
✔️診断書の依頼や医師との調整にも慣れている
などのメリットもあります。


❤️話すのが不安でも、大丈夫

年金の申請を依頼するには、自分の病気のことはもちろん、収入や日常生活のしんどさ・・といったプライベートな内容を打ち明ける必要があります。 最近会ったばかりの、自分のことをよく知らない社労士にそこまで話すのは、不安で当然です。

そんなときはまず、社労士事務所が行っている無料相談を利用してみるのも一つの手です。 実際に話してみて「この人なら安心できそう」と思えたら、依頼すればいいのです。


⚠️年金申請は“一発勝負”の側面も

障害年金の申請は、初回の請求で等級が決まる“一発勝負”的な側面があります。 特に精神障害の場合、初回の審査結果が後の判断に影響しやすく、「初回に非該当だった場合、再請求で覆すのは容易ではない」と言われています。

✅ だからこそ、正しく、的確に、タイミングよく伝えることが、本当に大切なのです。


🌱まとめ:あなたの「生きづらさ」は、書類でこそ守れる

働いていても、支援があってやっとの毎日でも、 その実情をちゃんと伝えれば、制度はあなたの味方になります。ひとりで悩まず、必要なときには、専門家の力も借りてみてくださいね。

※本記事は、note「みらい結社労士」で掲載した内容を一部転載しています。
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