うつ病と障害年金——退職の前に受診すべき理由

■はじめに

仕事のストレスや体調不良が続き、うつの症状が強まると「もう辞めたい」と思うのは自然なことです。
でもちょっと待ってください。障害年金は「初診日」によって将来の受給が大きく変わる制度。退職のタイミング次第で、支えとなる選択肢を失ってしまうこともあります。

この記事では、退職を考える前に知っておきたい「初診日と年金制度の関係」、そして「休職や傷病手当金を活用しながら受診するメリット」を整理します。


■障害年金は「初診日」で受給できる年金の種類が決まる

障害年金は、病気やケガで初めて医師の診療を受けた日(初診日)に加入していた年金制度で決まります。

  • 国民年金加入中なら → 障害基礎年金(1級・2級のみ)
  • 厚生年金加入中なら → 障害厚生年金(1級・2級・3級+障害手当金)

👉 同じ「うつ病」でも、初診日が厚生年金か国民年金かで大きく差がつきます。


■厚生年金が有利になる3つの理由

  1. 3級がある
     厚生年金には3級があります。軽度でも「労働能力に制限がある」と判断されれば受給できる可能性があり、無年金リスクを避けられます。
  2. 報酬比例部分が加算される
     現役時の収入に応じて支給額が増えるため、基礎年金だけの場合よりも有利です。
  3. 障害手当金(一時金)がある
     3級に該当しなくても労働に制限が残れば、報酬比例部分の2年分が一時金として支給されます。

■障害基礎年金と障害厚生年金の違い

(令和7年9月時点)

障害基礎年金(国民年金)

  • 1級:1,039,625円/年 + 子の加算
  • 2級:831,700円/年 + 子の加算
  • 3級・障害手当金:なし

👉 基礎年金は「定額」であり、加入期間や収入に関わらず同じ金額です。


障害厚生年金(厚生年金)

  • 1級:基礎年金+報酬比例部分+配偶者加給(該当する場合)
  • 2級:基礎年金+報酬比例部分+配偶者加給(該当する場合)
  • 3級:報酬比例部分のみ(最低保障額 623,800円/年)
  • 障害手当金:報酬比例部分の2年分を一時金で支給(最低保証額 1,247,600円)

👉 厚生年金加入中に初診日を迎えることで、将来の選択肢が大きく広がります。


■シミュレーション例

(令和7年9月時点・年収400万円・厚生年金加入10年の場合)

  • 障害基礎年金 2級(国民年金加入中に初診日)
     831,700円/年(定額。軽度の場合は対象外)
  • 障害厚生年金 2級(厚生年金加入中に初診日)
     約1,460,000円/年
     ※基礎年金+報酬比例部分を合算。報酬比例部分は「年収400万円・加入10年」の仮定で試算。
  • 障害厚生年金 3級
     約680,000円/年
     ※同条件での試算。最低保障額は 623,800円/年。
  • 障害厚生年金 障害手当金(一時金)
     約1,360,000円
     ※同条件での試算。最低保証額は 1,247,600円。

👉 同じ年収・加入歴でも、初診日が厚生年金か国民年金かで年間数十万円の差が生まれます。


※本記事の金額は 令和7年9月時点 の数値です。毎年度改定があるため、最新情報は下記の公式サイトでご確認ください。


■診断名は変わっても「うつ状態」の記録が大切

  • 最初は「適応障害」、後から「うつ病」に変わるケースは多い
  • 重要なのは「診断名」ではなく「症状の継続性」
  • 初診時に「うつ状態」「抑うつ症状」と書かれていれば、一連の疾患として扱われやすい

■退職後に初診日を迎えると不利になる理由

  • 3級や障害手当金が対象外になる
  • 報酬比例部分がなく受給額が少なくなる
  • 軽度の場合は無年金リスクもある

👉 「退職してから初めて受診」は制度上かなり不利です。


■休職制度と傷病手当金を活用するメリット

  • 在職扱いで厚生年金と健康保険を維持できる
  • 休職中の受診は「厚生年金加入中の初診日」として扱われる
  • 傷病手当金(支給開始日から通算して1年6か月)が生活保障になる

👉 傷病手当金は、退職後も一定条件を満たせば「継続給付」が可能な場合もあり、生活の土台を守る意味でとても重要です。

※詳細は協会けんぽの公式ページ「傷病手当金」をご確認ください。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/


■うつで衝動的に退職しないための3つの行動

  1. 受診予約をとる
  2. 休職制度と傷病手当金の条件を確認する
  3. 主治医・産業医・人事に相談する

👉 この3つを押さえるだけでも、制度上の不利益を減らせます。


■行動チェックリスト

□ 退職前に受診予約をしたか?
□ 休職規定を確認したか?
□ 傷病手当金の手続きを理解したか?
□ 初診日が厚生年金加入中になるよう動いているか?


■おわりに

退職や制度のことを一人で抱えるのは、とても大変なことです。

「辞めたいけれど不安」「制度のことを整理できていない」

そう感じたときは、まず受診。そして制度を味方につけることが第一歩になります。

👉その一歩が、あなたの生活を守り、未来を広げる力になります。

※本記事は令和7年9月時点の制度情報です

※本記事は、note「みらい結社労士」で掲載した内容を転載しています。
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